2023.11.24
11月21・22日、大原美術館の見学に、2日に分けて1クラス(30人)ずつ出掛けました。大原美術館は、隣町倉敷にある世界に誇る美術館です。誇る点というのは、一般の市民も美術作品を楽しめるようにという思いの下、日本で初めて開かれた私立の西洋美術館であることです。創設したのは大原孫三郎氏で、この方は、市民のために工場や学校や病院等も開きました。
大原美術館は、子どものための鑑賞プログラムを独自に作っており、御南認定こども園の子ども達に対しても毎年実施して下さっています。プログラムの内容は、子どもの中に感じる心が育って欲しいと願われたもので、決して堅苦しいものではなく、子どもの感性や発想を引き出してくれるようなものです。
さて、子ども達が最初に入った部屋は薄暗く、大きな絵がぐるりと飾ってありました。足を踏み入れた途端、美術館の雰囲気に圧倒されたようで、目を見開いて、キョロキョロとしていましたよ。
2階の大きな展示室では、学芸員の方に「好きな絵や気になる絵を探してみよう」と促され、自由に鑑賞しました。鑑賞の後は、好きになったり気になったりした絵を、選んだ理由と共に発表しました。ここで、学芸員の方のやりとりを1つご紹介しましょう。
アンリ・ル・シダネルの『夕暮の小卓』がお気に入りだと発表した女の子。その理由は、「静かだから」だそうです。【注:●…学芸員さん/○…子ども達】
●「この絵には、人がいる?」
○「いなーい!」
○「いるよ」
●「いるのかな。いないのかな?テーブルの上には、食事の用意がされているね」
○「片付けるの忘れちゃったんだよ」
○「あそこ(明りが灯っている部屋)で寝てるんじゃない」
○「あそこ(明りが灯っている部屋)でまだ(食事の)準備してるんだよ」
●「人がいたのかな。これから来るのかな?」
○「人は来るわけないよ。人形のためのごはんだから」
○「人形が後から来るんだよ」
○「内緒のパーティー」
視覚情報しか得られないはずの絵画から、「静かで好き」と感じ取ったことも素敵ですし、様々なことを想像し、自分なりの考えを次々に発言する様子を見て、のびのびと鑑賞してくれたのだろうと嬉しく思いました。これはほんの一例で、美術館を巡っている最中には、大人とは異なる着眼点や発想による呟きが、たくさん聞こえてきましたよ。美術館に対して、「つまらない」「よくわからなくて難しい」というイメージを持つのではなく、親しみを感じ、少しでも好きになってくれれば幸いです。
大原美術館を後にした子ども達は、美観地区の倉敷川の周りを散策しました。秋晴れの心地良い気候の中、柳や桜の木、白鳥、鯉、舟等を見て楽しみました。
おうちの人に用意してもらったお弁当は、市立美術館の建物の中にある1部屋をお借りして、美味しく楽しくいただきました。満腹になり、元気満タンになったところで、自然史博物館に向かいました。
自然史博物館には、年長組さんが大好きな昆虫の標本がたくさんあり、昆虫のブースだけで20分程じっくりと見学していました。博物館を堪能した後は、阿智神社に向けて散歩に出発です。
園長先生や副園長先生に、美観地区の白とグレーの美しい建物は、忍者や侍の時代からずっと大切にされていること等を教えてもらいながら、異世界のような雰囲気の道を進みます。長い石段を上って、阿智神社の神様にご挨拶した後は、綺麗な景色を楽しみました。
最後に、大原美術館分館の前庭で、オーギュスト・ロダンの『歩く人』を鑑賞。ここで園長先生から、子ども達に向けて質問がありました。「あの人の頭や腕はどうなっているんだろうね」。そこで、トルソーの頭と腕を想像して、みんなでポーズをとってみました。力強く足を踏み出す子、波乗りのようにバランスを取る子、空を仰ぎ見る子、力を込めて腕を出す子等、様々でしたよ。さすが、大原美術館の鑑賞を通して、芸術作品を見る目と心が芽生えてきた年長さんでした。
今回の遠足では、倉敷の方が大切にしている施設や街で、豊かな経験をさせて頂きました。子ども達も、街の人々の思いを感じ取り、どこかの情景を心に残してくれていたら良いなと思っています。